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認知症や物忘れ

認知症は脳の萎縮により、心身に異常をきたす病気です。体には、手が震える、姿勢が傾く、歩くのが遅くなるなどの影響が出ます。精神面では、異常なもの忘れで、数分前に言ったことも忘れて、同じことを何回も繰り返し言うようになったり、性格変化もあって、気の向いたことだけして、面倒なこと・嫌なことを中々しない。我慢や思慮がなく、頑固で怒りっぽい、といった様子になります。

普通の物忘れと認知症はどう違う?

「誰でもある物忘れ」と「異常な物忘れ」の違い

もの忘れについてですが、いわゆる誰でもある普通の物忘れと、認知症で起こる異常なもの忘れはどう違うのか。ですが、普通の物忘れは、顔は覚えているのに名前が出てこない、とっさに言葉が出ずに「あれ」「これ」といった表現が増える、二階に上がったのはいいが何をするのか思い出せない、そういったものがあります。なんとなく覚えているけど、あと一歩思い出せない。自分で忘れているのは分かるんだけどなぁ、といった自覚のあるタイプの物忘れになりますが、みなさん、経験があると思います。まあ、これは年のせいで心配はいりません。

一方、危険なもの忘れ、これには数分前に自分が話したことも忘れて、1日に何十回、何百回と同じ事を言う。さっき人が来たこと、昨日病院に行ったことをもう忘れている。忘れたことを人から言われると、「そんなはずない」と怒る。そういうものがあります。そんなに時間も立っていないのに、半日や1日の記憶がまるごとすっぽりと抜け落ちる。前後の状況も含めて完全に忘れてしまうので、何か忘れているという感覚が持てない。そういうタイプの物忘れです。

誰でもある物忘れ(年のせい)
  • 顔は覚えているのに、名前が出てこない。
  • とっさに言葉が出ずに、「あれ」「これ」といった表現が増える。
  • 二階に上がったのはいいが、何をするのか思い出せない。
  •  何となく覚えてるけど、あと一歩で思い出せない。(自覚のある物忘れ)
異常な物忘れ(認知症)
  • 前後の状況も含めて、完全に忘れてしまう。(=自覚のない物忘れ)
  • 数分前に自分が言った事を忘れて、同じことばかり言う。本人にはその自覚がない。
  • さっき人が来たこと、昨日病院に行ったことをもう忘れている。指摘されると「そんなはずない」と怒るか、「ああ、そうそう」と言いながら、全く覚えていない。
  • 家の近所など、すぐ迷子になる。電車やバスを使えず、タクシーで帰って来る。
  • 「ホッチキス」「薬指」「マイク」ぐらいのたまにしか使わない物の名前が分からない。
  • 日常会話でも、なかなか理解できない。会話がかみ合わない。
  • 電化製品の使い方が分からない。
  • 車の運転や家事をすると、手際が悪く見ていて危なっかしい。
  • こういう状態でも、本人には危機感や深刻感がない。ニコニコとして「大丈夫、何も困ってない」「家族は大袈裟、勝手に病人扱いする」と言う。
  •  すべてを完全に忘れて、自分が何か忘れているという感覚が持てない。(認知症)

認知症の原因 脳萎縮

脳の老化、アルコール、生活習慣

若い時にはぎっしり詰まっている脳も、年を取ると隙間だらけでスカスカになって、90にもなると5割の方が認知症を発症します。ここまで発症率が高いと、一応は病気なのですが、白髪やシワなどと一緒で老化現象の一種とも言えます。「じゃあ、どうしようもないのか」というと、そうでもなくて、予防法はあります。

長年にわたる飲酒は、脳を萎縮させ、10年から20年、人より早く認知症になります。お酒の害に強い方も中にはいますが、お酒は少量でも脳を確実に萎縮させる作用があります。もうひとつは、高血圧と糖尿病。初めの5年や10年はどうもないので、放置される事も多いですが、動脈硬化が進んで脳が死んで行くので、こういう方は若くして認知症になります。お酒を完全にやめて、食事を節制し適度の運動をする、それに毎年健康診断を受ける、そういったことが認知症の予防に直結します。

高齢者の正常な脳の画像

高齢者の正常な脳の画像

緑が頭蓋骨で、赤が脳、年を取ってくると、隙間が空いてきて黄色の部分が目立ってきますが、これぐらいの萎縮は正常範囲内です。

認知症の方の脳画像

アルツハイマー型痴呆の脳

緑色の頭蓋骨の中は、赤で示した脳はわずかで、黄色で示す隙間が目立っています。脳の重量にしても若い頃は1300gありますが、こういった状態になると700gほどしかありません。

糖尿病と高血圧で動脈硬化が進んだ方の脳画像

糖尿病と高血圧で動脈硬化が進んだ方の脳画像

こちらはまだ赤で示した脳の部分は多く、脳の重量は比較的保たれていますが、青で示す、血流が悪くて脳が死んでしまった所が相当にあります。

脳の重量と年齢

脳の重量と年齢のグラフ

頭を使わなかったら認知症になる?

最近では、脳のトレーニングで認知症は予防できるとか、頭を使わなかったら認知症になるとか、そういった話をよく耳にします。これに関してですが、賢い人や有名人が認知症になると「え、この人が…」と驚きますが、学歴と認知症の発症率に関する研究も既にあって、学歴が高かろうが活動的な方であろうが、認知症になる確率や進行のスピードは普通の人と何ら変わりないという結果が得られています。怠け者でごろごろしていたから、勉強ができないから、そういう理由で認知症にはなりません。また、脳のトレーニングや人との交流で活動的に過ごしたら大丈夫というものでもありません。認知症は生まれた時から、決まった年齢になると発症することが定められており、ただ、お酒を飲んだり、事故で脳に外傷を生じたり、動脈硬化があったりすると発症が早まるような病気です。

体の衰えと性格変化

認知症は体にも影響する
気力や自発性、我慢がなくなる

脳の萎縮は、何も記憶力だけでなく、体にも影響が出ます。その人の性格や印象も変わってきます。手が震えて、体は傾いて、動作も鈍くなって、何をするにも時間がかかる。年を取ると誰しも感じるようなことかもしれませんが、これも脳萎縮からくる、認知症の症状です。ほかにも、性格や印象も変わってきて、気力や体力がなく、面倒なことを嫌がるようになります。すぐしんどがって部屋にこもったり、風呂や着替えをせず、不潔でだらしない印象を与えたりします。また、気の向いたことしかしないので、自分勝手でわがままな印象を与えます。飴など好きなもの・食べたいものしか食べなかったり、頑固で気に入らないとすぐ怒ったりします。こういったものも認知症の症状です。

認知症に関するまとめ

認知症は脳の老化、脳萎縮が原因です。高齢になってからの発症はやむをえない所がありますが、お酒をよく飲んだり、糖尿病や高血圧を放置すると、50や60という若さでも認知症を発症します。認知症になると、異常な物忘れで、忘れたことが分からずに同じ話を何回も繰り返したり、たまに半日や1日の記憶がまるごと抜けたりします。体も衰えて、手足は震え、体は傾いて、何をするにも時間がかかるようになります。よく転んだり、それで骨折したり、トイレの失敗が増えたりします。また、性格や印象も、面倒なことを嫌がって、気の向いたことしかしなくなって、食の好みが偏ったり、風呂に入らなかったり、すぐ怒ったりします。